図説 世界地下名所百科 クリス・フィッチ 感想

イスタンブールの沈没宮殿、メキシコの麻薬密輸トンネルから首都圏外郭放水路までの地下名所を挿絵と写真と巧みな文章で巡る

図説 世界地下名所百科 クリス・フィッチ 著 上京恵 訳

 

キーワード:地下遺構、地下空間、地下施設

 

あらすじ

 

都市の表層からは見えない魅惑の名所への招待 世界中の地下の魅力とその成り立ちを地図・写真と解説で伝える

 

感想

 

本書は、4部構成となっている。

 

第1部 自然の造形 ワイトモ洞窟 ニュージーランド ユカタンのセノーテ メキシコ ポストイナ洞窟 スロベニア ベロブキナ洞窟 ジョージア カズムラ洞窟 アメリカ クエバ・デ・ヒラ・ルス メキシコ ディア洞窟 マレーシア バンド アメリカ ダークスター洞窟 ウズベキスタン 古代巣穴 ブラジル

 

第2部 古代 ショーヴェ=ポン・ダルク フランス デリンクユ トルコ 秦の始皇帝陵 中国 ヘルクラネウム イタリア ラビリントス洞窟 ギリシャ テノチティトラン メキシコ パシリカ・シスタン(イスタンブール地下宮殿) トルコ エレファンタ石窟群 インド クムラン洞窟 イスラエル クエバ・デ・ロス・タヨス エクアドル

 

第3部 近大ロンドン地下鉄 イギリス トンネル57 ドイツ バーリントン イギリス クーバーベティ オーストラリア クチトンネル ベトナム キャンプセンチュリー グリーンランド 大人工河川 リビア ゾンネンベルク スイス ダルバザガスクレーター トルクメニスタン 首都圏外郭放水路(G-Cans) 日本

 

第4部 現代 大型ハドロン衝突型加速器 スイス・フランス オタイメサ アメリカ・メキシコ グアテラマシティの陥没穴 グアテマラ スヴァールバル世界種子貯蔵庫 ノルウェー ヘルシンキ地下都市 フィンランド コルヴェジ鉱山 コンゴ民主共和国 エルサレム墓地 イスラエル コンコルディア基地 南極大陸 ロサンゼルス・トンネル アメリカ ヘトリスヘイジ アイスランド

 

気になる場所が多く、目移りしてしまったのだが、とくに気になったのが、第4部のコルヴェジ鉱山 コンゴ民主共和国である。
コンゴ民主共和国(DRC)では、リチウム電池に欠かせないコルバトの生産が盛んである。全世界の年間供給量の60%を産出している。DRCにとって、まさに金のなる泉なのだ。国にとってそうでも、国民にとっては事情が違う。鉱山での採鉱夫たち(クロイザー)が推定15万人以上いて、輸出量の1/5を占めている。だが、非公式の労働者なのだ。

 

現場では、赤土をぞんざいに堀った泥だらけのトンネルに、有毒ガスを排出するための細いパイプという劣悪な環境。貧しい成年男性・少年が主だった労働力となり、1日12~20時間働き、稼ぎはたったの1~2ドル。とうぜん会社のサポートも技能訓練・医療体制も何もない。鉱山に踏み込めないものは、廃棄された副産物を汚れた川で洗うことで、コルバトを採取しているわけだが、当然、先天異常の増加につながっている。

 

このような環境下は、しばしば現代の奴隷と評されている。内部事情と合わせて、こころを打った文章がある。

 

地下で起こる出来事には、白日のもとにさらすべきものもあるー露わになったものを我々が気に入ろうと気に入るまいとー

 

こうした現実に目を背け続けるのか、覚悟が問われているように捉えた。